原価のこと
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【2022年4月追記】アパレルにとって「原価率50%以上」は何が凄いのか。

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「あそこのブランドの原価率高くてコスパ良いらしいよ」

昨年2017年頃から日本のアパレル・ファッション業界において、「原価率」というものが広く一般消費者に向けての情報でも取り上げられることが増えてきました。
生産管理として業界で働いている身としては、原価率というものは避けて通れない永遠の課題とも言える存在です。

アパレル・ファッション業界の原価構造やこれまでの販売手法を考えた場合、原価率を高く設定するということは非常に怖いことです。

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原価率はどう決まっているの?

洋服の原価率は、商品の販売価格に対する原価の割合です。

『原価=実際に商品を作る過程で必要な経費(原材料費 + 縫製工賃 + 検品仕上げ代 + 輸送経費)』
の考え方は不変基本ですが、原価率をどう設定するかについてはいくつか方法があります。

  1. 積み上げ式
    目安となる原価率を設定しておいて、計算して出た原価に原価率をそのまま計算して上代を設定する方式です。
  2. 逆算式
    目安となる原価率と上代を設定しておいて、原価が合わなければ目安の原価率と上代に合うよう原材料等を見直して行く手法です。多くのアパレル企業がこの手法をとっていると思われます。
  3. 強制設定式
    「強制設定式」は自分が付けました。
    それぞれの商品の上代を先に設定して、希望の素材や附属を使いながらも全て一定の原価率でしか仕入をしないという取り決めを仕入先とする手法です。

特殊な事例ですが、一つの工場や商社、OEM企業に多くの種類の商品をまとめて発注する時にこの方式をとるアパレル企業が存在します。

一見下請けに対するひどい方式のように感じますが、生産側は多くの商品の発注を同時に受けられるというメリットがあります。
また、値段が合わないものは効率よく損を抑え、通常より大きく利益が出る商品も生産することで、トータルとして利益ができるように調整しています。

原価に対する視点を増やそう。※2022年4月追記

2022年時点において、洋服の原価に対する基本の考え方は当時と変わらず「原材料費 + 縫製工賃 + 検品仕上げ代 + 輸送経費」で問題はない。

ただし、この記事を読んでいる読者の方が縫製工場ではなく製造小売業(俗に言うSPA)や、OEM/ODM 企業に所属しているのであれば、企業の業績に関する会計的な視点からの考え方も合わせて持っておくと、より原価に対して深く考えることができる。

その考え方とは、「直接原価」と「間接原価」である。

「直接原価」は、これまで何度が述べている基本の原価、製造原価だと考えていただきたい。

「間接原価」とは、商品の製造原価に含まれない間接的な原価を指す。
商社や縫製工場に自社企画商品を発注し、製造部分のみを委託している総合アパレルの場合を例に挙げてみよう。

この場合の「直接原価」は、
『洋服を構成する生地代+附属代+工場(商社)に支払う縫製工賃+検品所での検品台+プレス屋でのプレス代』
となる。

一方、この場合の「間接原価」を構成する要素は、
パターン作成に使用した用紙代・本社オフィスの電気代・デザイナーやパタンナーや生産管理の人件費(労務費) が考えられる。

この「間接原価」は、一つの商品に対してどれだけの費用がかかったのか正確に計算することが難しいため、各企業毎に計算式が異なると考えてほしい。

一例を挙げると、「人件費+光熱費+材料(パターン用の紙) ÷ 当月の製品仕入れの総点数」といった具合で計算する場合もある。

すべて完成した商品を買い付けている場合は計算式に入れる要素が非常に少ないため、様々な仕入れ方をしているブランドにおいては、現場の企画パタンナー生産管理の人間が間接原価をあまり気にしていない といったケースも多々ある。

より俯瞰して企業全体の業績という視点から原価を一度考えてみてほしい。

手間のかかる商品に対しては数字に表れていない原価がかかっていると考えることで、より効率的な仕事の進め方を見つけるきっかけになるかもしれない。

各アパレルの一般的な原価率は?  ※18/12/17追記

109系などの販売価格が安価な商品を取り扱う場合は約15〜20%。
これは私がOEM企業で109系の商品を生産していた頃の数字です。
百貨店やマルイに卸す商品の場合で約25%程度、
セレクトショップのオリジナルやEC販売メインで約30%が一般的な原価率と言われています。
超低価格帯であるしまむらは、原価率50〜60%と非常に高原価率となっています。
いくら大量に商品を作ることで原価を抑えることができるとはいえ、商品の販売価格が1,000円程度であれば原価率が高くなるのは必然です。

109系の原価率が低いと感じられると思います。
これらのブランドは中国や韓国の製品市場で非常に安く仕入れた商品に自ブランドのタグを付けて販売していることがあるからです。

何度でも言いたいが、「高原価率=お得」とは言い切れない。

ただ高原価率を謳うことは正直誰にでも出来ます。
しかし品質が伴っていなければ意味がありません。

また、高原価率だからといっても、ユニクロと同程度の値段で販売できるかと言うとそれは不可能に近いことです。

オール日本製を貫く「UNITED TOKYO」の考え方に惚れた。は良い。※2022年4月追記

日本のアパレル・ファッション業界で高原価率について考える場合、以前別記事でも紹介させていただいた「UNITED TOKYO」のことは外せません。

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UNITED TOKYOの高原価率について書かれた記事はいくつもあるのですが、話題に出たことで表面上をなぞっただけのアフィサイトばかりのようです。
Google検索のトップにでる記事からして本質を捉えられている感じはしません。

一番理解ができるのは、ブランドを運営しているTOKYOBASEさん自身が書かれている記事です。

原価率の問題で、いくらクオリティが高くても費用対効果で見れば値段が高くなってしまうのが現在のMADE IN JAPANの商品です。そのため、UNITED TOKYOは世界を見据えた上で、高原価率に設定しクオリティを保ちながら、値段を抑えるという決断を下しました

引用元:TOKYO BASE リクルートサイト

理想としてはこれまで多くの業界人が考えてきたことなのでしょうが、現実にビジネスとして成立させていることに称賛を惜しみません。
アパレル・ファッション業界に関わる人でなくもわかる品質の良さと良心的な値段なので、一度他のお店を見るついででもショップに行ってみてほしいと思います。

※18/12/17追記
久しぶりに「UNITED TOKYO」の店舗に行ったのですが、一部商品カテゴリーで以前より素材の質が落ちたように感じました。
今後継続して店頭をチェックしていこうと思います。

※22/4/11追記。
時流のせいか、以前よりメンズは全体的に商品の価格が上がった(2,000〜4,000円程度)印象を受けたが、レディースの春アイテムはデザイン性の高いブラウスが11,000円、スカートが17,800円と非常に良心的な価格設定だと感じた。

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