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現役のアパレルSPA生産管理が実践している、”納期遅れ”を発生させないための手法

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納期遅れ。

アパレル・ファッション業界で働く人であれば一度は耳にしたことがある嫌な言葉だと思います。
今回は業界人を悩ます”納期遅れ”についての解説と、私が実践している納期遅れを防ぐための方策について解説していきます。

”納期遅れ”を防ぐには、仕組みと時間の余裕が必要。

あなたがアパレル企業に勤めていて納期遅れを防ぎたいと考えているのであれば、
とにかく「仕組みを作ること」と「スケジュールに余裕をもたせること」、この2点につきます。

この2点を実践するための解説をこれから進めていくのですが、まずは”納期遅れ”を理解しておく必要があります。

アパレル・ファッション業界における”納期遅れ”について理解する

納期遅れの定義とは

はじめに、納期遅れという言葉の定義から理解しておきましょう。
インターネットで検索すると様々な意味ができていますが、今回は下記を”納期遅れの定義”とします。

工場などで、手配ミス、製造ミスなどにより、納入先の要求の期日に
送付できず、遅れてしまっている状態。
繰り返すと、取引停止になる。なぜなら、納入先の会社から先の納期送れを誘発するから。
出典:はてなキーワード

納期遅れにより引き起こされる損害

納期遅れが発生することにより、様々な弊害が生まれます。
自社店舗や通販サイトを持つアパレル企業、つまり納品される側の場合は大きく3点の損害に繋がります。

1.店頭での商品の欠品
2.季節物の販売期間が遅れた分だけ短くなる。
3.コーディネートで販売する予定ができなくなり、他の商品の売れ行きに悪影響を及ぼす。

消費者に直接販売している企業は、商品が売れて初めて会社の収入に変わるため、納期遅れによる売り逃しは死活問題です。

逆に縫製工場やOEM企業といった納品する側には損害がないのかというと、こちらも納期遅れは大きく3点の損害に繋がります。

1.納入先からの信用がなくなり、取引が停止になる可能性が出る。
2.買い取りで納めている場合、納品日や取引条件によっては商品代金の入金時期が遅くなる。
3.同一工場で生産をする後の商品のスケジュールがきつくなる。

どちらの立場においても、納期遅れは良くないものだとお分かりいただけると思います。

それ、本当に”納期遅れ”と言えるのか?

私の個人的な考えでは”納期遅れが起きた”と、”当初の予定から納品日が変わった”は違うものだとしています。
単なる言葉遊びのようですが、明確に違います。

一番最初に営業やMD(マーチャンダイザー、職種の説明は後日)から設定させる納期から納品日が後ろになると、生産管理や縫製工場が責任を問われることが多いです。
しかし現場の生産管理や縫製工場からすると、それを”納期遅れ”として責任を問われるのはおかしいという言い分が出てくる場合があります。
たとえば、絶対にできるともできないとも言い切れない状態で納期を設定されてしまい変更が通らない時や、不可抗力の事由により誰にも道しようもない状態になった時や、
営業からの発注のタイミングが遅くなり、当初予定していたスケジュールの余裕がなくなった状態での生産スタートになった時など色々あります。

では一体、「きちんとした納期」とはどのタイミングで設定できるものなのでしょうか。まともな営業やMDなら知っておきたい、知らなければいけないことです。

私の考えになりますが、「きちんとした納期」は素材/パターン/附属が全て工場に揃っており(または揃う日が確定できている状態)、生産数が確定し、仕様も決定してサンプルでの確認も終わってはじめて設定できるものだと考えています。不確定要素が多い状態での納期は、あくまで”努力目標”にすぎません。

そこまで待って納期を設定しても、当確定要素がゼロになったわけではないので全く問題なく遅れが出ないかというわけではありません。辛いことですが。
直前に生産している商品で問題が発生し、該当商品の生産開始時期が遅れたり、縫製工場の工員が急に減ったり、発注側のミスで生地や付属に不足が出たりなど様々な問題発生のリスクはあります。

不可抗力によるものは仕方ないとして、発注のタイミングの遅れや厳しい納期設定による”店頭投入タイミングが意図と違う”ということは防ぐことができそうです。
これから具体的な手法を紹介していきます。

アパレルSPA生産管理が実践している、”納期遅れ”を発生させない手法

リスクがゼロにならない以上、納期遅れが絶対に発生しないとは言えません。
おそらくアパレル・ファッション業界で働くまともな人であれば、誰に聞いても同じ回答が得られると思います。

しかしリスクを考慮し、殆どの商品を最初の計画通りに店頭に投入できるための”工夫”の方策はいくつかあります。

最初に原因を追求する

「負けに不思議の負けなし」という言葉にもあるように、納期遅れにも必ず原因があります。
まずは原因を追求しましょう。
そうすることで前回記事にも書いたように、本当に納期遅れなのかそうでないのか分かります。

営業やMDが何を言ってきても確固たる自信があれば「納期遅れではない!」と言える状態であれば他者へ無理を求めるという行動には走らないはずです。

もし納期遅れで、原因が自分にある場合は素直に謝りましょう。
その上で対応策を考えたほうがスムーズです。

発注時に考える仕組み、スケジュールを計算する仕組みを作る

「仕事は段取りが8割」
社会人であれば一度はどこかで聞いたことがあると思います。

これはアパレル・ファッション業界のものづくりにおいてもあてはまる言葉です。
間違った段取りをくまないため、または段取りに時間をかけないための仕組みが必要となります。

1.商品展開を決める人に必要な仕組み
商品の展開時期を決め、数量を決定するMD(マーチャンダイザー)のような人にも納期に関する仕組みが必要です。
その仕組みとは、ものづくりに必要な時間をざっくり知ることができるものです。

例えば、アイテムカテゴリー別での数量決定〜入荷までの大体の日数があります。

ニット:50日
ジャケット:60日

Excelで表にまとめても、ノートに手書きでも良いのですが、この部分をMDだけでなく販売員まで、社内全員が見られる状態にしておくと追加の要望を出しやすくなります。

2.生産管理がスケジュール計算に必要な仕組み
納期に関わる生産管理が持つべき一番仕組みは、前述の発注者が持つべき仕組みのようにざっくりした生産日数ではなく、より細かい工程別の日数を計算する仕組みです。
裁断・縫製・仕上げ・検品といった基本的な項目から、原材料の輸送期間や完成品の生産国から日本への輸送機関も計算できる状態にしておくべきです。

仕組みから算出されるスケジュールに、リスクを考慮した余裕をプラスする

次に仕組みから算出された基本のスケジュールに、商品ごとのリスクを考慮した時間の余裕を乗せて生産スケジュールを決めます。
ていくらでも余裕を持たせるというわけにはいきません。
人気商品の追加であったり、企画が決まるまで時間がかかることもあるからです。

では適切な余裕とはどの程度必要なのでしょうか。

これは商品と生産のタイミングによって変わってくるものなのですが、大まかにいうと次の3段階それぞれで余裕をもたせる必要があります。

1.発注前
2.発注後〜商品の倉庫入荷(納品)までの間
3.商品が倉庫に到着〜店頭までの間

1は企画のデザイン決定やサンプル作成といった部分に余裕が必要です。
2は主に商品を生産する期間に余裕が絶対に必要です。
3は最後の砦です。縫製工場などの商品の仕入先に対して提示している納期から遅れた場合でも、店頭に到着するタイミングが変わらなければ欠品という事態は避けられます。

個人的な考えでは、1と3には1週間程度(3はできれば2週間)、2には2〜3週間程度の余裕があれば問題ないと思います。
はなぜ余裕をもたせることが必要かということを説明して、相手に理解してもらわなければ仕組みとして定着させることはできません。
何度説明しても”最短”を求めてくる営業やMDは存在しますが(残念ながら”余裕”という概念が理解できないのでしょう)、無理をしないためにも無視して仕組みにしてしまった方がいいです。

他者へ無理を求めるのは最悪の対応策

長い目で見なくても、無理して働くことが良くないと誰もが思います。

上記の”無理して”というのは、納期遅れが確実に発生するという状態になってから慌てて行動することです。
例えば、下記のような行動を指します。

・縫製工場に怒って電話して、残業をしてでも納期を間に合わせるよう詰める。
・自社内の検品担当に納品前の各色見本を届いたその日に確認するよう急に仕事を振る。
・仕上げをする所に無茶なスケジュールでの仕上げ作業を求める。

私がOEM企業(受注側)に勤めていた時には、上記はもちろん夜中に呼び出されて怒られたりが日常茶飯事になった時期もありました。
今考えると恐ろしいことです。
そういった、「他者への無理を求める」対応策というのは一番悪手だと考えています。

まとめ

今回紹介した内容をまとめると、

・納期遅れを防ぐには、仕組みと余裕が必要。
・仕組みを作るためには、どういった時に納期遅れとなるのか知ることが必要。
・ものづくりの各工程で、1日〜1週間程度の余裕が必要。
・それでも納期遅れが発生してしまったら、素直に謝罪してリカバリーをする。

いちばん大事なのは店頭での欠品を防ぐこと、そして適切なタイミングで販売することで最大限利益をだすということです。

納期遅れのリスクはゼロになりません、ですがリスクを最大限減らすことは可能です。
はじめは仕組みを作る余裕がなかったり、上手くいかないこともあるでしょう。今回紹介した方法を続けることで、きっと納期遅れが減って業務が楽に進められるようになるはずです。

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