アパレル製品の生産はバランスで成り立っている。
「高品質で売れる商品を、より安く、早く、大量に生産してくれ」
表現は若干異なれど、アパレル企業で生産管理職をしていてこの言葉を言われたことがない人はいないのではないでしょうか。
社会に出たばかりの頃は、私も理想に燃えそういった完璧なものづくりを目指したことがあります。
しかし今ははっきりと、
「無茶言わないでください。」
と言えます。
なぜ無茶なことなのか、アパレル製品のものづくりにおけるバランスを基に説明していきます。
アパレル製品の生産は5つの要素のバランスで成り立っている。
よくある五角形のレーダーチャートを想像してください。 (※下は参考図)
バランスとはレーダーチャートの各要素にパラメータを割り振って形を作るイメージです。
その要素について説明します。
コスト(原価)
以前から何度かお話している商品を生産する際にかかる費用です。
品質
縫製の品質、パターンの質、仕上げの質が考えられます。
数量
発注数量が多いほど縫製工賃は下げられる上、原材料の値段も発注量が非常に多い場合通常より安くなることがあります。
納期
納期が近く生産に充てられるん日数が少ないほど、縫製工場は多くの人間に協力してもらい、残業をしながらでも納期に間に合わせようと生産をします。
通常より人件費がかかるため、当然ながらその増えた人件費がアパレル企業に請求する縫製工賃に響いてきます。
デザイン(仕様)の複雑さ
デザイン(仕様)の複雑さは生産日数と1日あたりに生産できる枚数に大きな影響があります。
各要素に割り振れる量には限界がある
上記の5要素をレーダーチャートの容量で優先度の高いものほど外側に来る様にスコア付していきます。
その際に注意すべきことは1点だけです。
それは、完璧な(全要素が外枠いっぱいのきれいな五角形の状態)商品はありえないと理解することです。
納期を極端に短くすれば、原価は上がります。そして品質が下がるリスクも非常に大きくなリます。
数量を極端に多くすれば、原価は下がりますが生産に多くの日数が必要になる上、デザイン(仕様)の簡略化を求められるかもしれません。
商品が入荷するまでバランス感覚を問われる
商品の量産に入ってからも、仕様がやっぱり難しから変更したいとか、納期変更してほしいといった要望が社内社内問わず出てきます。
なので量産が始まったあとも実際に入荷するまでバランスをとることこを忘れないでいる必要があります。
安定したものづくりのための考え方
このバランスを調整していくのが、アパレルにおける生産管理の一番の仕事なのだと最近は考えるようになりました。
より良い商品を作るために理想を追い求めるだけではなく、足元を見て現実的に考え調整し行動すること。
このバランス感覚で仕事を円滑に進める生産管理が一人でも多く出てきてほしいと願います。