アパレル基礎講座
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アパレル市場と繊維産業の縮小の原因とは

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記事内に商品プロモーションを含む場合があります

前回記事にて、アパレル市場規模と繊維産業の縮小について取り上げました。

今回はその原因となる問題と現状について、企画・ものづくり・販売の3つの面から取り上げていきます。

企画の問題

商品開発力の低下

現在の大半のアパレルメーカーは自社で素材や付属を開発することなく、生地メーカーや付属メーカーが企画開発した既成品のみを使用している。
自ら商品に合わせたor企画に合わせた原材料を試行錯誤しながら開発するという経験が無いため、斬新な商品が生まれにくい。
そういった経験を積まないまま絵を描くだけの企画職では、当然ながら企画力という面での大きな成長は得られない。

企画力の低下

以前は特に安価な洋服(109系など)において、企画を自社で行わず企画会社に丸投げして自社のブランドとして販売を行うという形式(ODM生産)が中心となっていた。
近年は商品のグレードに関係なく、企画力のある企画会社にデザインを委託し、商品を生産しているブランドが増えている。
原因は前述の商品開発力の低下にある。

商品の同質化

前述のように企画会社へのデザイン委託が増えると、様々なブランドと商品のデザインが似通ってくるという事態に陥る。
企画会社としても同じデザインの素材替え等で様々なアパレルメーカーに企画提案しないと効率が悪く大きな利益が見込めないからだ。
ODM企業は企画から生産までを一貫して行うことが多いため、商品の品質においても他者と変わらないものになってしまう。
また、企画会社の立場からすると提案して生産した商品が売れないと次の企画提案に進めないため、どうしても売れているデザイン/流行を取り入れたデザインに偏ってしまう。そのため市場の動向を見て短サイクルで商品を生産するという流れができてしまい商品の品質面での不安が生まれてくる。

負のサイクル

商品が同質化して同じようなデザインが市場に溢れている状態になると、商品の魅力は希少性という観点から見るとどうしても薄れてしまう。
かつては自社で企画・開発をおこない他社と違うとして顧客から評価を受けていたブランドが、企画を外部に委託して商品が同質化することにより顧客がそのブランドで購入する理由と魅力を失い顧客離れが起こってしまう。
この状態に陥ると、「売り上げを取るための企画が必要→意思決定を引きつけるため、企画の短サイクル化→ODM企業への丸投げ→商品の同質化→顧客離れ→売り上げを…」という負のサイクルにはまってしまうのは自然の摂理と言ってしまっていいのかもしれない。

ものづくりの問題

現代は4つのものづくりモデルがある

・水平分業型
商品を製造する工場、企画を行うアパレルメーカー、商品を販売する小売、とそれぞれの企業が分業で商品の販売までを行う形である。
・垂直統合型
製造、企画、小売までを一貫して行う形である。グローバルに店舗を展開しているZARAが代表例である。商品の在庫管理、配送までも自社で行う場合も多い。
・セレクト型
企画・小売を自社で行い、製造は縫製工場や商社、OEM企業に委託する形である。日本国内のアパレル・ファッション業界ではSPAと呼ばれる企業がこの形をとっている。
生産設備を自社で持たないため、垂直統合型と比較すると製造原価のコントロールが難しいというデメリットはあるが、年中工場を稼働させる必要がないため売上に応じて商品の製造発注量の調整がしやすい。
・ファクトリー型
縫製工場やOEM企業自ら製造・企画・卸までおこない、小売(最終消費者への販売)のみを他者へ委託する形である。
近年は製造工場の情報を全面に出して、こだわったものづくりを売りにしているブランドも見られる。

水平分業型モデルの限界と成長の要素

現在は日本国内に限らず中国においても人件費や原材料費が上がっており、以前と同じコストで商品を製造することが難しくなってきた。
更に売れ筋の短期化、生産リードタイムの短縮に伴い全てを分業とする水平分業型のビジネスモデルでは流れについていけない時代になっている。

小売のみのアパレル小売企業、企画・卸のみのアパレルメーカー、それぞれ素材メーカーや縫製工場などとの長期的取り組みによる関係性を築けていない。

この点を上手くできているのがアダストリア等のSPA企業である。
同じ素材を大量に素材メーカーから仕入れることにより原価を抑え、複数ブランドでデザインを変え同じ素材を使用する。多ブランド、多店舗展開しているため1つのブランドの業績が厳しい状況だとしても企業として突然死するリスクは単独ブランド企業に比べると遥かに小さい。
素材メーカーとしても大量発注が長期的に見込めるため良好な関係を築きやすい。

多ブランド・多店舗展開という壁はあるものの、現代のアパレル企業としての成長要素として学べる部分はあるはずである。

販売方式の問題

情報の活用不足

情報を活用することは一見簡単なように見えて難しい。
現在はPOSレジを導入していない企業のほうが少数だと思う。
しかしPOSレジを導入して情報を容易に集めることはできても、その情報を活用することは容易ではない。
”今”を知ることは目的ではない、”今後”を決めるための情報である。

委託販売が販売力の弱体化を招いた

アパレル・ファッション業界のビジネスモデルの話題になると必ず出てくるのが、百貨店で行われていた”委託販売”である。
百貨店が大量の商品をアパレルメーカーから仕入れるが、売れ残った商品はメーカーへ返品できるという恐ろしいシステムである。
かつては百貨店のブランドバリューと消費者の衣類への消費志向の高さから大きな問題とは見られていなかったが、現在では悪しき商習慣と代表とされている。

このシステムはアパレルメーカーにとってのリスクという面だけでなく、百貨店としての販売力低下という問題も引き起こすことになったと推測する。
在庫リスクがないため、売り切る意識をどうしても持てなくなる販売員や現場責任者も少なくなかったはずだ。

過剰在庫問題

在庫ゼロによる機会ロスを防ぐため、更に前述の委託販売という在庫リスクゼロという異常な状態が後押ししてアパレルメーカーからの過剰な仕入れから過剰在庫という問題も引込されてきた。当然残った商品を返品されたアパレルメーカーとしては不良在庫を抱えることになり経営を圧迫してしまう。

販売チャネルを横断した連携不足

現在はネットでの洋服購入の市場が年々拡大している。
ここで問題となってくるのは自社店舗での在庫と通販用在庫の連動である。

実際に私自身が勤めるアパレルSPA企業でも上記の問題は起こっており、店舗では在庫が余っている状態なのに自社通販サイトでは完売で機会ロスという事態は特別なことではなくなっている。
物流倉庫での在庫一元化は可能なのだが、各店舗からECへの在庫移動にはどうしても時間が必要となるため解決はかなり難しい。
この点はやはりリアルな実物を販売しているビジネスである以上、ある程度は避けようのない問題だと考えられる。

上手にできていると思われる企業では通販ページで各店舗でのリアル在庫を確認して通販としてその場でキープができたり、逆に通販用在庫を各店舗で受け取るといったサービスで対応しています。

まとめ

業界の縮小の原因について、今回は取り上げてみました。
アパレル市場の景気は現在も良いとはいえないし、先行きも不透明です。

ですが、ものづくりや販売チャネル連携のシステムで常に改善や革新を試みている企業も確かに存在します。
これからの時代はそういった、旧態依然の習慣を取っ払った企業であれば縮小する市場において確実に利益を取れる企業となっていくのではないかと考えています。

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