原価のこと
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洋服の原価におけるカラクリを考察する、「安い=悪い」ではない。

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前回記事「アパレル商品(洋服)の製造における原価とは?」からの続きです。

前回、洋服の製造原価について5つのカテゴリーから説明させていただきました。

その記事の中の後半の一節、

スタートしたばかりのファッションブランドがTシャツを10枚作ってクオリティーと原価率の高さを(他社が作ったら75000円だけど5000円です!みたいな)アピールしても、現実は大手が1000枚を同じTシャツを作れば原価率は低くても消費者には同じくらいの値段か、もっと安く提供できる可能性が非常に高いからです。

上記について、なぜなのかを発注側と受注側それぞれの視点からまとめます。

発注側のアパレル企業の視点

まずは製造現場ではなく、発注側のアパレル企業の視点から考えます。

10枚作るのも1000枚作るのもアパレル企業の手間はさほど変わらない。

デザイナー(企画職)、パタンナー、生産管理を自社で抱えているアパレル企業の場合だと、原価として算出した金額以外に社内人員の人件費が実際にはかかっています。

デザイナーが生地や附属を選び、パタンナーが型紙を作成し、生産管理が原材料を発注し納期管理をしたりと、1つの商品に対して様々な業務を社内で行っています。
1つの商品あたりにかかる人件費を厳密に算出することは非常に手間なのと原価が最後まで決められないため、商品の原価に含んでいるアパレル企業はまず無いと思います。
そうすると商品の生産枚数に関係なく必要な業務は発生するため、当然原価に含まないとはいえ人件費を10枚の商品か1000枚の商品にかけるのとでは100倍の差があります。

10枚と1000枚での見えない原価の差

原価1000円のTシャツに3人のアパレル企業担当者(人件費10000円/日と仮定)がそれぞれ1日ずつ業務を行ったとして、
・生産枚数10枚の場合
→30000円(10000円✕3人) ÷ 10枚 = 3000円/枚が見えない原価として存在しています。

・生産枚数1000枚の場合
→30000円(10000円✕3人) ÷ 1000枚 = 30円/枚が見えない原価として存在しています。

1つの商品にかかる業務の量が生産枚数に関係ないことを考えると、非常に大きな差だということがお分かりいただけると思います。

受注側の縫製工場の視点

次に受注側の縫製工場の視点から考えます。

同じ型を多く作るほうが縫製工場の効率は上がって利益が出せる。

アパレル企業と違い、縫製工場は生産枚数に比例して縫う時間が増えるため10枚と1000枚では当然必要な時間と業務量は大きく違います。
しかしながら、同じ商品を多く縫っているとその商品を縫うことに工員が慣れてきて効率がどんどん上がります。
最初は1日あたり10枚しか縫えなかったのが、1週間後には1日あたり20枚縫えるようになったということもよくあります。
工員の人件費が生産枚数に応じて増えるのではなく労働時間に対してのものなので、効率が上がったほうが当然向上の利益が大きくなります。
また、効率が上がり早くアパレル企業の発注数量の生産が終わると、納期よりも早く納品できる縫製工場としてアパレル企業の信頼も得られます。

生産枚数が非常に少ない場合、工員が縫製に慣れて効率が上がるまえに次の商品の生産をしなければならないため利益を上げることが大変になります。
生産枚数が少ないことによるデメリットは他にもあり、ミシンの糸と針を商品に合わせて変えるため都度交換の手間がかかり更に効率を落としてしまいます。

生産枚数が多いことで、逆に利益がなくなるケースもある

例外はあります。例えば、

  • 縫製が非常に難しいため、スケジュールが読めない商品
  • 縫製工賃が、どちらかの立場からすると合っていない。(セール用商品で、安い工賃になってしまった等)

通常あまりないことですが、上記のような場合は生産枚数が少ない方が発注側も受注側も苦労せずにすみます。

まとめ

基本的には、上記のように同じ型であれば生産枚数が多い方がアパレル企業も縫製工場も嬉しいです。

一方的に情報を受け取るだけだと気づかないことですが今回の記事を読んで、
”原価率が高い=他のアパレルが同じ値段で売っているものより良い物ではない”
ということがお分かりいただけたと思います。

実際に商品を見て、自分が付いている値段に合うものなのかを判断していくことが大切です。

洋服の製造原価や原価率(販売価格に対しての製造原価比率)については下記の記事と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。

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