日本の繊維素材産業について知る②
日本国内の繊維素材生産は長期間に渡って守られてきた産業でした。
素材品種ごとに地域(産地)が分かれる
日本では地域ぐるみで素材の紡績、織布、染色等を分業しながらおこなってきたという歴史があります。
それが地域ごとの素材産地としての特色を作ることになりました。
素材品種の産地としては、
・ウール素材:尾州
・綿素材:浜松
・合繊ジャガード:桐生
などが素材の産地として代表的な地域です。
素材産地の未来は明るくない
国内のアパレル市場規模が縮小そして低価格帯の洋服が増えるにしたがって、海外の生地市場での生地を使用するアパレルメーガーが増えてきました。
洋服の生産自体を海外で一貫して行うため、国内の生地素材が使用される機会が減ってきています。
また、短納期で小ロット、多品番を販売するアパレル小売企業が増えたため国内素材を使用するとしても利益を上げづらい環境になってしまっています。
国内産地企業の取り組み
前述したような環境をそのままにしていたら、やがて日本の素材生産産業が沈没してしまいます。
そこで国内産地企業が一体化して、素材開発や効率的な販売を連携して行おうという動きが1998年から出てきました。
それが「JFW ジャパン・クリエーション」です。
産地の枠を超えたテキスタイルの合同展示会で、出展企業は250社以上、来場者は2万人を超える大きな展示会として知られています。
近年は海外企業からの出展もあり、ヨーロッパで開催されて世界的にも有名な「プルミエール・ヴィジョン」にひけをとらない規模にまで拡大をしています。
繊維素材産業の未来を明るくするために
これからの繊維素材産業の未来を明るくするためには、3つのチャレンジが必要だと私は考えます。
1.海外展開
現在においても海外高級ブランドへの素材販売をしている企業は存在します。
ですが今後は中価格帯ブランドへの素材提供がより販売量を増やすためには必要となってくると考えます。
2.技術開発、商品開発
ありきたりな生地を作っているだけでは海外での生産生地に勝てるはずはありません。
少しこだわった程度ではいずれ海外でも同じレベルの素材をより安価に生産されるでしょう。
3.新規市場開拓
洋服用の生地市場にこだわらず、自動車のシート用生地やインテリア用生地など他の市場への積極的な進出も生き残りのためには必要となってくると考えます。
池井戸潤氏の小説を実写化した「下町ロケット」というドラマの中でも、洋服用の織物を生産している企業が新規事業として医療用器具のための素材開発をおこなっているというエピソードが有りました。