アパレルOEM企業の「取引条件」と「在庫」とについて理解する。
今回はアパレル企業とOEM企業の、商品在庫の関係性についてお届けします。
OEM企業が商品を発注元のアパレル企業に納品する際の取り決めによって大きく変わることがあります。
商品の納品には2種類の取引条件がある。
納品する商品の扱いには2種類あります。
買取
読んで字のごとく、発注元のアパレル企業が納品時にすべての商品を買い取って自社の在庫資産にすることです。
商品を納品したタイミングで売上げが発生し、取引条件どおりに商品代金がOEM企業に支払われます。
委託
発注元が指定する場所に商品を納品はするものの、商品の所有権は納品元のOEM企業に残ったままにします。
期間を区切って、消費者に売れた分の商品代金のみをアパレル企業がOEM企業に支払います。
そして最初に設定した販売期間終了後は商品をOEM企業にすべて戻します。
委託の場合、同じ商品でもアパレル企業が支払う商品代金を買取仕入に比べて高く設定します。
「買取」が一般的、「委託」は特殊
現在のアパレル・ファッション業界のなかでは商品は全量買取仕入という形式が一般的で、委託仕入という形式を取るのはごく一部の特殊なケースです。
これは商品を生産して収めるOEM企業にとって、委託仕入のリスクが非常に大きいため自然と買取仕入が一般的にあったのだと思われます。
「なぜ委託仕入のリスクが大きく、買取仕入のほうが良いのか?」という疑問がでてくると思います。
その疑問の答えには、商品在庫の扱いが大きく関係してきます。
OEM企業にとっての「在庫」リスク
「買取」の場合、すぐに売上となる。
買取仕入の場合、商品の在庫はすべて納品先のアパレル企業の資産になります。
つまり納品時にOEM企業は在庫を全く持たず作って収めた商品すべてが売上げに変わります。
一方でアパレル企業は商品代金をすべて支払うものの、その後店頭やECサイトで商品が消費者に購入してもらえなければお金にならず在庫のみが残ってしまいます。
しかし自社のブランド名を冠した商品のため、セールで値引きしたりアウトレット店舗で販売したりなど商品を販売する手段は持ち続けます。
OEM企業が商品在庫を持つ場合、その商品を直接消費者にも他のアパレル企業にも販売する事はできません。
すでに最初に納品したアパレル企業のブランドの商品として販売してしまっているからです。
もしそれを無視してブランドタグなどを変えて販売をして見つかった場合、大変大きな問題になります。
このようにOEM企業にとって在庫を持つことはデメリットが非常に大きいことなのです。
「委託」は、リスクもあるが大きな利益が見込める場合もある。
最初に説明したように、委託仕入の場合は買取仕入に比べて商品1枚あたりの代金が大きくなります。
これはOEM企業側のリスクを考えれば当然のことだと思います。
この場合の商品代金の設定は買取仕入時の「製造原価+OEM企業の利益」ではなく、「商品の上代(販売価格)の○○%」となることが多いようです。
私の経験からいうと、大体上代の45%〜50%に設定されます。
※アパレル商品の原価率は販売価格の20〜30%であることが多いため、非常にOEM企業側の利益が大きくなる。
商品が売れれば売れるほど、1枚あたり買取の倍近くの利益が得られる為、商品企画力に自信があるOEM企業はメリットを優先することがあります。