アパレルビジネス

「委託仕入」はアパレル企業にとって諸刃の剣である。

前回は商品を生産して納めるOEM企業の視点から、商品仕入形式についてお話してきましたが、消費者に販売するアパレル企業から見ると「委託仕入」にリスクはないのでしょうか?

商品の所有権(資産)を自社が持たず、一定期間販売後は返品できる。
一見メリットしかないように感じますが、アパレル企業にとって「委託仕入」は諸刃の剣です。

今回は商品をOEM企業から仕入れるアパレル企業の視点から商品仕入の形式についてお届けしたいと思います。

在庫処分について考える必要がなくなる

まずは委託仕入によるメリットについて。
一番大きなメリットは「不良在庫」の処分方法について考える必要がなくなります。
仕入先のOEM企業と定めた販売期間が終了したタイミングで全量返品すれば、自社の在庫資産としては残りません。
滞留した不良在庫が店頭と倉庫の場所を圧迫して、セールやアウトレット店舗での処分方法に頭を悩ませるというアパレル特有の悩みから開放されます。

多様な商品が容易に揃う

2番めのメリットは多様な商品を買取仕入に比べ容易に店頭に並べられるという点があります。
買取仕入の場合、商品仕入れ担当者は限られた仕入予算の中で売上げを最大限上げるために、仕入れる商品の種類や枚数に非常に神経を使います。
仕入予算を超えての仕入は、仮に大きく売上を落としたときに会社の財務状況を一気に圧迫する事態を招いてしまうからです。
委託仕入で売れた分だけ商品代金を支払うという取り決めであれば、多くの商品を委託仕入して店頭に並べても急に会社の財務に悪影響を及ぼすことは考えにくいです。

取り決めによっては多くの資金が必要

上記のように商品代金の支払は毎月売れた枚数分だけという取り決めであれば、仕入資金は最低限ですみます。
しかし最初に全量分の商品代金を支払い、一定期間終了後に返品した枚数分だけ仕入先のOEM企業から戻してもらうという取り決めだと、買取仕入時より多くの仕入資金が必要になります。

商品原価が上がるため大きく利益を出しづらい

前回記事でOEM企業にとっては在庫リスクを引き受ける分だけ商品代金を高く設定できるため売れた時の利益が大きくなるとお話しました。
その逆のことがアパレル企業には起こります。

アパレルOEM企業の「取引条件」と「在庫」とについて理解する。今回はアパレル企業とOEM企業の、商品在庫の関係性についてお届けします。 OEM企業が商品を発注元のアパレル企業に納品する際の取り決め...

商品代金が高い分、非常に多く売れた商品が出てきても買取仕入時に比べて利益が半分しか取れないという事態が起こります。
販売価格(上代)10000円の商品が500枚売れたと仮定して考えてみましょう。

・製造原価2000円、買取仕入でOEM企業から1枚あたり2500円で仕入れた場合
→商品1枚あたりのアパレル企業の粗利益は7500円、500枚売れたら3,750,000円の利益になります。
・製造原価2000円、委託仕入でOEM企業から1枚あたり5000円で仕入れた場合
→商品1枚あたりのアパレル企業の粗利益は5000円、500枚売れたら2,500,000円の利益になります。

このケースでいうと、1種類の商品だけで1,250,000円もの利益の差が出ます。
これを多くの種類の商品と多くの店舗で広げると、委託仕入により得ることができなかった利益が非常に大きいということが理解できると思います。